社会人になり、仕事にも恵まれていた中で「ぬくぬくして”いない”環境に身を置きたい」という強い思いが生まれ、会社をやめて海外インターンシップに参加したMさん。
一歩踏み出したらそこは目が回るほどの忙しい現場で、考え方が変わったといいます。
そして、海外インターンの後にそのまま現地に住むことを選択するなど、人生の大きな転機になったとお話しいただきました。
そんなMさんを海外インターンシップに突き動かした強い思いは何だったのでしょうか。
本記事は彼女らしい特徴的な話し方をそのまま、お送りします。
このページの目次
社会人になってから「挑戦したい」の一心で踏み出した「やるしかない」環境
25歳になる手前、社会人海外インターンに踏み出した
海外インターンシップに参加する前の自分は、普通に会社勤めをしていた。
就職氷河期と言われていた時代に大学を卒業して就職した会社は、ありがたいことに上司や周囲の環境にも恵まれていた。
ただずっと心に引っかかるところがあった。
20代前半のうちに、ぬくぬくとして”いない”環境に身を置いてみたいと。
25歳になろうという手前で私は出発した。誰も助けてくれない未知の国へ。
500室を超えるホテルに日本語話者は3名というチャレンジングな状況
インターンとして入ったのは部屋数500室を超える大型ホテル。当時ゲストの半数は日本人だった。
どうしてホテルを選んだのか、それは単調な毎日を繰り返していた中で芽生えた、もっとたくさんの人に会ってみたいという単純な動機だった。
500室を超える部屋数の半数を超える日本人ゲスト。
それに対して日本語を話せるスタッフは私を含めて僅かに3名だった。
朝から晩まで鳴り止まない呼び出しのコール。
当時はまだスマホはなく、情報量は今とは雲泥の差である。
朝ホテルのロビーに立てば、観光客の方から両替やスパの予約を頼まれたり、出張者の方からは現地の駐在員さんへの電話を頼まれたり。
朝の喧噪が終わると次はその日の宿泊者の確認だ。
前日から準備していた日本人ゲストのリストを使って、きちんと希望の部屋が割り当てられているか、特別なリクエストは準備されているかなどを細かくチェックしていく。
どれもスムーズにはいかず、その都度現地スタッフと話し合いながら進めていく。
話し合いといえば聞こえはいいが、ほとんどは気の抜けない闘いだ。
英語で詰まっている場合ではない、こちらの意思を上手く伝えて動いてもらわなくてはならない。
躊躇する暇もない忙しさの中で度胸がついた
忙しい中でもイベント等がなければ日中は少しだけ昼休みが取れた。
午後2時を過ぎるとだんだん日本から到着するお客様がチェックインされる時間なのでお出迎えする。
そこから夕方までは客足が途切れることなくざわざわと時間が過ぎていく。
気づけばもう午後6時を過ぎているということばかりだった。
夕方にはいろいろなゲストがロビーにあふれる。
夕食に行くお迎えを待つ観光客や、出張者と待ち合わせする現地駐在員、日本人ばかりではなく世界中からのゲスト。
目の回りそうな一日の終わりだ。
それでも夜到着する便にVIPゲストがいたりするとまだ終わりではない。
このような怒濤の日々の中、失敗してもいいからやってみようという精神を培った。
それまでは電話応対だけでも赤面するような恥ずかしがり屋だったのに、恥ずかしがる暇等ない状況に、度胸が据わったのである。
自分の無価値感を乗り越えて今につながるインターンシップ
自分には価値がないのでは?単調な毎日の中で生まれた「変わりたい」という想い
インターンシップに参加する前の私は、失敗するのが怖く、自分の発言には価値がないと思っていた。
今になるとなぜそこまで自己評価が低かったのかと思うが、何かを発言することが怖く、何かを言えば周囲に笑われるのではといつも怯えていた。
大学卒業後にどうにか就職出来た会社は、こんな私でも大切にしてくれた貴重な会社であった。
それでも年月を経て仕事を覚え、毎日に単調さを感じるようになったとき、私は静かに準備を始めた。
近いうちに必ず誰も自分のことを知らない外国に住んで、働くのだと。
そうでなければ一生自分は自己肯定感の低さとともに生きていかなければならないと、半ば強迫観念のようなものまであった。
そんな想いにかられてのインターンシップへの参加だった。
インターンの経験の延長線上に今がある
インターンシップを終えた後、私は数年ホテルで勤めたうちに現地の人と結婚した。
ホテル業務は大好きな仕事ではあったが、日本人スタッフの少ない海外のホテルは四六時中いつ呼び出しがかかるかわからない過酷な現場のため、子どもを持ちたいと願っていた私は家庭との両立ができないと思ったからである。
しかし独身のときに昼夜なくがむしゃらに働いた年月は、私のなかに確かな変化をもたらした。
まず、恥ずかしくなくなった。
何に対しても堂々と自分の意見を言えるようになった。以前は誰かに自分と違う意見を言われると萎縮してしまい何も言えなくなってしまう自分がいた。
けれどもインターンシップ後は人と人が違う意見を持つことを当然と受け止め、自分の意見を卑下することなく人に伝えられるようになった。
保護者同士のやり取りや、先生との話し合いなど、子育てをしている現在の日常でも役立っている。
恥ずかしがって何もしなければ何も始まらない。
これが分かったことはインターンに参加した最大のメリットだったと思っている。
子どもたちにもその経験を伝えていきたい
現在は子育てに忙しくあまり社会に出られていないが、いつか近い将来、自分の子どもたちにもこの経験を伝えたいと思っている。
子どもたちもこれから成長するにつれ、経験の少なさから戸惑うことが多くあるだろう。
そうしたときには常に寄り添い、言葉をかけてあげたいと思っている。
そして自分自身もまた、再び社会に出るだろう。
何事にも臆することなく立ち向かえる自分になれたことで、今後どのような出合いがあるだろうか。
怖さよりも楽しみの方が勝っている。
このように考えられるようになったのも、インターンシップに参加したおかげだったと思っている。
インターネットの時代でも、現地に足を運んでみてほしい
インターネットが発達した現代であっても、実際に現地に足を踏み入れなければ見えないものがたくさんあります。
誰にも助けを求められない環境に身をおいてみることで、これまで自分の置かれていた状況に感謝も生まれました。
是非若いうちにインターンシップを経験してみてください。
キャライズ編集部からのコメント
Mさんは社会人になってから会社をやめてインターンシップに参加をしました。
ベトナム人200名、その他外国人10名という大きな組織の中で、日本人はわずか2名。
業務は英語で行うのですが、500室のホテルのゲストの半数は日本人で、対応で休まる暇もなかったそうです。
想像するだけでその忙しさに目が回ってしまいそうな現場ですが、そんな「ぬくぬくして”いない”環境」だからこそたくさんの気づきがあったのではないでしょうか。
忙しい職場、と聞くと「辛そうだな」と思ってしまう方もいるかもしれませんが、修業の場としては間違いなく素晴らしい環境です。
ワークライフバランスを大事にしたい、そう思っている方であっても、期間が決まっている海外インターンであれば、忙しい環境に身を置くことで自らを大きく成長させるという選択肢もアリでしょう。
というか、せっかく人生の中でも大事な時間とお金をかけていく場所ですから、ある程度挑戦的な方が良いと私達は考えています。
Mさんは電話応対だけでも赤面する恥ずかしがり屋だったそうですが、500室のホテルで3人しかいない日本語話者ということで、毎日たくさんのゲストの対応をすることになったと思います。
ベトナム人スタッフからは、日本人スタッフとして日本人の対応を期待されている環境の中で恥ずかしい、とか考える暇もなかったのでしょう。
もともと「もっとたくさんの人に会ってみたい」というモチベーションがあったこともあってか、度胸がついた後は沢山の人を笑顔にしていったMさんの様子が目に浮かびます。
海外のホテルで日本語が通じると安心する、そう思う方もたくさんいるでしょう。
そういう方から、たくさんの感謝を受け取ったのだと思います。
それとは逆に、海外であっても日本品質の「おもてなし」を要求され、現地では難しい要求やクレームもたくさんあったことでしょう。
文化や価値観が異なる現地のスタッフ対して指導を行うことは実はとても難しいことです。
スタッフに対して強く指導をしなければならない場面もあれば、フォローをしなければいけない場面もたくさんあるでしょう。
インターンを通じて、感情が大きく動かされたり、自分がやったことのないことに挑戦したりする場面がたくさんあったのではないかと思います。
海外インターンシップでは、インターン生という立場だとしても現地スタッフを指導する立場になることがあります。
例えば、Mさんのインターンシップ先のようにお客さんが日本人の場合ですと、日本人のお客さんがどう思っているのか、などは現地スタッフよりもインターン生のほうが詳しいからです。
ベトナムなどの新興国の場合は、所得水準の違い等もあり現地スタッフが十分なおもてなしを受けられるお店に行ったことがないかもしれません。
しかし、私達日本人はスターバックスの接客を受けたことがありますよね。
それだけで、十分指導できることがあるのではないでしょうか。
Mさんは社会人としてインターンシップに参加しましたが、「その会社が提供する価値を最大化する」ということを考えると、実は年齢関係なくできることはたくさんあると思います。
そういう経験を積むことは日本国内でインターンシップやアルバイト、若手社員という立場では難しいかもしれませんが、海外インターンシップは絶好の機会です。
話が逸れてしまいましたが、Mさんはその後現地で結婚、そして子育てを行っているそうです。
海外インターンシップを通じて現地での就職、駐在、又は結婚をしたという例はちらほら見かけます。
その土地やその国の人達が合うか合わないかも、行ってみないとわからないこと。
実際にその国、その街に住んでみて、人々と触れ合って、自分にとって素晴らしいと思う環境を見つけるというのも海外インターンシップでできることです。
日本と、もう一つの国を知るだけでも、旅行などでいろいろな国に行ったときにその国を見る目線も変わるはずです。
あなたの中にもう一つのものさしを手に入れる、そんな海外インターンの使い方も良いと思います。
Mさんは子供にもこの経験を伝えていきたいと語ってくれました。
海外インターンシップは人生を大きく変えるきっかけになる大きな一歩です。
あなたも一歩踏み出してみませんか?