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今回はアフリカ、ケニアとザンビアの病院でインターンシップを経験した医学生を取材しました。なぜアフリカなのか、アフリカではどのような生活を送っていたのか、必見です!
アフリカに行きたいと思ったきっかけは“さだまさし”
自己紹介をお願いします
神戸大学医学部6年生の松本りかです。6年生で医学部生は皆海外実習に行くのですが、その中の一環として1カ月間ザンビアの病院、もう1カ月間ケニアの病院に勤務してました。
アフリカに学校の研修制度で行くことができるのですか?
いえ、さすがに大学の研修制度でアフリカに行くことは出来ないので、自分で探してアポをとりました。ただ、学校の研修の一環としてカウントはされます。
アフリカには元々興味があったのですか?
アフリカにどうしても一度行ってみたかったので、じゃあ実習で行けばいいかと思って決めました。アフリカに興味を持ち始めたのは、さだまさしの曲の歌詞に出てくるケニアで働く日本人医師です。そこから実際アフリカを見てみたいなと思うようになりました。
さだまさしの曲がお好きなんですか?
はい、母の影響で。ケニアが登場するのは「風に立つライオン」という曲の歌詞です。少し前に映画も公開していました。それがあってケニアには絶対に行こうと思っていました。
医療関係の分野に進まれたのは何かきっかけがるのですか?
医学部を考えたのは、高校一年生の春休みに東日本大震災があって、その時にボランティアに申し込んだら「駅から遠いので車で来てもらわないといけない、運転免許が無い方は今回は気持ちだけで」という風に言われました。資格が無いと何もできないのかと感じて、資格がとれるところをと考えました。そんな中で興味があるなと思ったのが、建築と医療でした。大学入試の兼ね合いもあって医療の道に進みました。
アフリカの病院でのインターンシップ
インターン先はどのようなところですか?
ザンビアで通っていた病院ははミッションホスピタルといって、キリスト教の団体が運営をしています。ケニアで通っていた病院は公立の地域中核病院です。一般的に医学部生が海外の実習先を探すときは、行きたい国と“medical elective”で検索をすると探すことができるらしいのですが、私は調べ方を知らなくて、イギリスの「the elective networks」という病院実習を募集している病院を集めたサイトがあり、有料なのですがそれを利用しました。
ザンビアのミッションホスピタルは、キリスト教の救世軍が運営している病院でした。ミッションホスピタルは寄付で成り立っているので経営者側から見れば私立ですが、患者側から見れば医療費が無料のため公立と同じでした。そのため所得の低い患者がくる病です。
具体的にどのような業務を行っていたのですか?
基本的に朝病院に行って回診に参加をして、そのあとは自分の興味のある科に行って、先生の診療しているのを見学したり、採血だったりという出来そうな手技はさせてもらいました。カルテを書いたりとかもですね。出来る学生はしていましたが、自分は英語が苦手だったのでカルテを書いたりすることは出来なかったです。内容的には日本で実施している実習と変わらないのですが、やりたいと伝えれば、治療方針のディスカッションや手術の前立ちなど、日本よりも多くの事を出来ます。
日本でも医療実習は結構やられてたのですか?
日本でも医療を学ぶ学生は必ず実習に参加をしないといけません。ただ、日本ではやはり安全性の問題などで出来ることが限られています。学生も多いのであまり採血とかもしないのですが、アフリカでは日本では学生に許可がされていない動脈採血などの手技も出来ます。またHIVやマラリア、鎌状赤血球症などの日本では見ることのできな病気をみることもできます。完全に自分のやり方次第でインターンシップの幅を調節することができます。診察をしたりとか処方をしたいと言えばそれも出来ます。
ザンビアとケニアの病院で業務内容は違うのですか?
ザンビアの方が冬であまりマラリアとかがいなかったのと、農繁期だったのであまり患者さんもいませんでした。ですので患者さんは少ないけど学生さんはたくさんいて、することがあまりありませんでした。対してケニアはすることも多くて、先生のサポートとかできました。疾患は違いましたが、トータルでみたら業務内容はそんなに変わりませんでした。ただ2カ国行くことで国によって医療制度も全然違うし、国柄とかも違うなと感じて面白かったです。
具体的にどう違ったのですか?
ザンビアの方が貧しい国なので、ザンビアの方が出来る検査も少ないし、設備も少ないです。ガーデンチェアにタイヤをつけて車椅子にしていたりだとか。血液検査もザンビアは2週間に一回しかできません。ケニアは病院でできるけど、ちょっと特殊な検査とかになると近くの私立の病院に送るとかはありました。またザンビアのミッションホスピタルは医療費が基本的に無料なのですが、ケニアの医療制度がアメリカと似たような感じで、完全自費で自分で公立の保険に入るか、私立の保険に入るかなので、経済的な事情で治療を諦める人もいまいした。
ケニアの方が医療費がかかるのですね。
そうですね。ケニアの方が医療における経済的格差が激しいです。ザンビアはそもそも薬の在庫がある無しで処方が変わったりします。物資の不足はザンビアの方が厳しいけど、経済的事情まで考えるとケニアの方が厳しいかなという感じです。その人の経済事情次第なのですが。ザンビアでも私が行ったのが田舎の方だったので、あまり高所得者がいませんでした。首都の方とかに行くとケニアと同様なことが起こっているのかもしれないですね。
国によって働き方なども違いましたか?
向こうには日本にはない「クリニカルオフィサー」という職種があります。サブのお医者さんのような人たちで、ザンビアは医学部7年間、ケニアは6年間在籍するとお医者さんなのですが、クリニカルオフィサーはどちらの国でも3年間で在籍でなれます。簡単な診察とかを行っています。そのクリニカルオフィサーが行っているのがザンビアは外来と簡単な手術が入っていたりするのですが、ケニアの方は入院患者さんの管理や簡単な手術の一部が出来るという感じです。同じクリニカルオフィサーですが許されている仕事の内容が違いました。これは、日本にはない職種で、恐らくアフリカ特有のものだと思います。
医師不足が深刻で、日本は毎年医者が5000人くらい出るのですが、ケニアは毎年500人くらい新卒の医者がでないので、ザンビアはもう少し少ないと思います。
インターン先に他に日本人はいたのですか?
私が行ったときはいませんでした。でもザンビアの方はイギリスからの学生とか香港からの学生がいました。ケニアの方は実はJICAの人が同じ病院にいたらしいのですが、最後に一回会ったくらいでした。常に誰かJICAから派遣されている感じでした。ザンビアの方も私が日本人初めてだったのですが、私の後にまたそこに申し込んだという人もいます。
一般的に医学部の学生が海外に学びに行くというとき、アフリカにいる人は多いのですか?
いや、大体みんな先進国に行くと思います。若しくは東南アジアが多いと思います。アフリカは…私の大学はまだ3人目です。
仕事の中でやりがいがあったことは何ですか?
ケニアの時に、回診をしてから治療を行っていくのですが、朝から回診をして全部の患者さんの治療方針を決めました。ケニアでは、日本だったら看護師さんがやる仕事である点滴の針を置いたりとか、そういうこともお医者さんが行います。採血も日本なら看護師さんがやるのですが、採血して検査室にもっていくということもお医者さんがやっています。それを全部一通りやって、午後に処置をするのですが、処置をするときに毎回誰にどんな処置をするのかナースステーションに帰って確認しないといけなくて、効率が悪すぎると思ました。なので患者さんのリストを作って、誰がどんな症状をもっていてこの処置をするというのをメモして、秘書のようなことをやっていました。それのおかげで少しは効率が良くなったと思います。それがようやく自分が見つけた出来ることでした。
医療英語がもう少し出来る人とかでしたら、外来で患者さん診察して、こういう治療法が良いと思うと計画を立てて、こんな方針で行こうと思いすけど、どうですか?というのをクリニカルオフィサーに言うことができたりだとか。やる気があればどこまででもやりたいことが出来ると思います。
一番達成感あったことは何ですか?
ケニアで孤児院にホームステイさせてもらっていました。そこに住む孤児院の子たちはお小遣いがないので、自分の欲しいものがあったら、お願いをしてOKもらえたら買ってもらうという状況でした。そこで自分は寄付はそんなにできないけど、お金の作り方を教えてあげたいなと思って。足ふみミシンが見つかったので、それを修理してもらいました。アフリカの布があるのですが、それでカバンを作って、その作り方やミシンの扱い方を全部教えました。ボーイスカウトで白人の子たちがキャンプに来るので、その白人の子たち相手に商売を始めてみてっていうことを教えて、あの子たちに対して何かを残すことができたかなと思います。
ケニアの孤児院で子供たちと生活
孤児院に住んでいたのですか?
ケニアでは孤児院にホームステイをして、病院に通っていたという感じです。仲介業者を通して、現地の病院にアポをとってもらったのですが、その仲介業者が経営をしている孤児院にホームステイさせてもらいました。毎朝そこからバスに乗って病院に通っていました。子供たちのご飯を分けてもらって、代わりに日本食を作ってあげたりしていました。孤児院のスタッフとして仕事をしたりとかは無かったのですが、ミシンの使い方を教えたり、大学に行きたいけど教科書が無いと言っていた子に買ってあげるなど細々した手伝いはしていました。
家賃はかからないのですか?
空港からのピックアップや寄付、紹介料含めて結構お金は払ってます。4週間で10万以上は払っていると思います。
ザンビアではどこに住んでいたのですか?
そこに来る留学生用の寮があって、ひとり部屋に住みながらキッチンは共同という感じでした。みんなで共同で自炊したりしていました。ザンビアの病院は常にインターン生が誰かいるという状態でした。
ほとんどがイギリスからだったのですが、アメリカの人もいたりしました。アメリカの人は病院の事務、経営者側のインターンで来ていたので、そういう医療職以外でも病院に関わることならインターンシップを出来ます。また病院に小学校や中学校が隣接されていたので、学校にインターンにもいけると思います。イギリス人は旅行者で、日帰りで施設を見に来るという方々もいて、イギリスでは結構メジャーらしいです。アフリカに旅行をしたついでに、寄付で成り立っている施設に行ったりとかよくするらしいです。
現地の食べ物ってどんな感じなのですか?
ケニアもザンビアも主食はトウモロコシの粉を練ったもので、名前は国によって違うのですが、味は一緒でアフリカ南部のほとんどの国がそれを食していると思います。
それは美味しいのですか?
私は美味しく食べていました。でも中には日本人でひとくち食べてやめたという方もいるらしくて、人によりけりですね。ザンビアでは他の留学生と自炊だったので、パスタなどでアフリカ料理はあまり食べる機会がありませんでした。ザンビアの時は基本自炊だったので、最後の日にハウスキーパーさんが思い出にで作ってくれたくらいでした。ケニアの方は、ほんとは自炊なのですが、ひとりなので、孤児院のごはんをもらっていて、基本的に現地の食べ物を食べていました。基本メイズと呼ばれるトウモロコシが安いので、これが主食で、日本の白米の代わりでした。
日本食が恋しくなることはありませんでしたか?
あまり無かったのですが、日本から出汁と醤油を少し持って行っていました。向こうで中国製の醤油は手に入るので、出汁さえあれば日本食は作れると思います。
買い物はどのようにしていましたか?
基本的には市場で買い物をしていました。ケニアにはスーパーマーケットもあったので、スーパーにも行ったりしていました。ただザンビアが田舎の栄えていない貧しいところだったので肉を手に入れようと思ったら、2時間ドライブしたところにしかなくて、ですので毎週末誰かしら旅行に行くときに大量に買ってきて冷凍していました。貯めておかないと、近所の市場はほんとに限られた食材しか買うことができないので、お米も買えないし、ジャガイモも無い時が多くて基本サツマイモしかないっていう感じでした。キャベツがあったりなかったり、なすびがあったりなかったりくらいしか自分達が食べれそうな食材は売っていませんでした。向こうの人はケールを好んで食べるのですが、苦いのであまり好んで食べれませんでした。ウガリ(トウモロコシの粉を練ったものの名称)かケールと肉と魚の3点セットが基本でした。
移動はどのようにしていたのですか?
基本的にはマタツという乗り合いバスを利用していました。乗り合いバスに乗り込んで、満席になるまで1時間でも2時間でも客拾いにぐるぐるして、満席になったら出発という感じです。
料金は安いのですか?
ザンビアは日本とあまり物価が変わらなくて、2時間乗って300円くらいでした。ケニアは現地人でしたら30分で着くところで50円とかでした。でもムズング(黒人以外の人々の呼称)だったら70円請求されたりって感じでした。肌の色で値段は変わります。
肌の色による区別は結構あるのですか?
黒人以外の人間をムズングと呼ぶのですが、そんなムズングという言葉が普通にあるくらいなので区別はあります。差別とはまた少し違いうのかなという感じなのですが、生活にもう馴染んでいるような感じです。私たちって黄色人種じゃないですか?だからホワイトではなくてイエローだよって説明していたのですが、でも君らは黒じゃないからムズングでしょって。自分達からしたら君らは皆白だよって言われていました。
僕も含めムズングの方の方が料金が高かったりということがよくあるのですか?
ムズングプライスとか普通に言われます。向こうは、お金がある人はお金を払うのが当然、のような考え方があるみたいです。
日本だったら、100グラムのビスケットと200グラムのビスケットだったら200グラムの方がグラム単位の値段は安いですよね。でもケニアやザンビアは倍以上します。200グラム入っているものを買えるようなお金のある人はお金をたくさん払って当たり前でしょみたいな考え方らしいです。
良くも悪くもシェア精神なのか与えられることに慣れすぎているのか結構ザンビアは物乞いが多かったので、しんどかったです。寮の中庭に出てたら、門のところに子供が集まってきて「チョコレートちょうだい」と彼らから言われていました。
通信環境は整っているのですか?
ケニアやザンビアはWi-Fiがないので、simフリーのスマホは必須です。向こうはガラケーはないのにスマホがいきなり普及したので、回線に問題はありませんでした。Simフリーのスマホさえあれば、100円くらいで番号も作れて、スクラッチカードでデータを買うことができました。簡単で便利でした。
保険は入っていきましたか?
海外実習用に大学から勧められたものがあったので入りました。それが医療実習に特化しているのかは分からないのです。
アフリカに行くに際して準備物で何か特別なものを持っていったりしましたか?
基本的な薬、風邪薬、整腸剤、下痢止めとかは持っていきました。自分は全然飲まなかったのですが、万が一体調崩したときに手に入るとは限らないので、持っていきました。あとは、一応、水をきれいにするためのフィルターを買っていきました。でも持っていってなくてもコーヒーフィルターとかで飲み水を作っていました。停電をするので懐中電灯は必要でした。
停電は良くあるのですか?
ちょくちょく電力が足りなくなるので、計画停電みたいな感じで今日は何時~何時まで停電です、といった状態でした。また街灯が全然ないので、暗くなってから外を歩く際も懐中電灯は必要でした。
ケニアもザンビアも英語が通じるのですか?
そうですね、ザンビアは公用語が英語ですし、ケニアも公用語はスワヒリ語ですが、英語も国の言葉として使われています。それぞれ現地の民族の言葉があるので、どちらかというとスワヒリ語も英語も学校に通っている人しか喋れませんでした。学校に行けない人たちは民族の言葉しか話せませんので。ザンビアではみんなトンが語を話していて、医学生が英語に直してくれる、といった感じでした。ケニアは現地人がスワヒリ語かルオ語で話すのですが、分からないので英語に訳してもらっていました。
学校に行けていない子供たちも結構いるのですか?
そうですね、学費自体は無料なはずなのですが、家の手伝いで行かないとか、学校からドロップアウトして行ってない子とかがいるので、村に行くと全然英語は通じなかったです。
アフリカへ行きたい!でももちろん準備も大変。
アフリカに行くにあたって、御両親は反対されなかったのですか?
かなり反対されました。反対されたのですが、自分の中で勝手に「トビタテ留学JAPANに合格したら行っていいよね」と決めて、それもあってトビタテ留学JAPANに申し込みをしました。トビタテ留学JAPANに申し込んだ根本の動機は親を説得するためでした。
トビタテ留学JAPANのおかげで金銭的には苦労はなかったのですか?
トビタテのお金では半分くらいしかカバーできませんでした。寄付で成り立っている孤児院に住んだということと、アフリカは予防接種が大変で、予防接種だけでトータル10万円くらいかかりました。マラリアの予防薬も飲んでいました。マラリア予防薬は長期にわたって服用が必要かつ保険外なので、高額になります。海外だと安く手に入るみたいですが不安だったので日本でもらっていきました。
アフリカの医療を体感して見据える未来
今後のことを教えて下さい
今後は臨床医として地域医療に携わっていくつもりです。それもあって今回田舎のインターンも田舎の学校を選んで行ったのですが、それも自分が将来田舎で働くことになるということが念頭にありました。医者の数が少ないところでの医療をみてみたいと思って。しばらくは日本で働いて、そのあとはまた海外に行ってみようかなと思っています。
ボランティアで行くのは性に合わないので、ケニアで正規雇用で働くのもいいなと思っています。ケニアは外国人医師を積極的に雇用しているらしく、また自分の英語のスキルアップにもなると思って。その後で先進国を目指せたらと。ザンビアはもうお腹いっぱいです(笑)ケニアで就職するのもありだと思っています。
海外インターンシップ迷ってる人にひとこと!
行けばどうにかなります。(笑)特にアフリカなんか向こうが自由におおらかな文化なので、自分がやりたいと思ったら何でも出来るし、でも自分がやりたいって言わなかったら日本と同じことしかできないのですが、全然違う世界が広がっているので、是非行って欲しいです。特にお医者さんになるような人はずっと日本にいたら見れないようなものもあって、社会経験にもなるから見てみて欲しいなと思います。アフリカでも行けばなんとかなります。和風出汁さえ持っていけば日本食作れます。だしの素は大事です。(笑)
インタビューを終えて
旅行でさえ、アフリカに行くというのは苦労が多いと思うのですが、住み、働くということは物凄く大変なことだと思います。でもそんな大変そうなことを「何とかなる」と割り切れる松本さんは本当に強い方だなと思いました。