大学1年生の夏休みにフィリピンのセブ島でインターンシップを経験したあーちゃんさんのお話を伺いました。
教育支援や食料支援など、子どもの生活水準向上のための支援を行うという1ヶ月間のインターンシップを通じて、実際の現場にいかなければわからなかった数々のギャップを体験したそうです。
日本のやり方をそのまま発展途上国に持ち込んでもうまくいかない、という話を聞いたことがある方は多いかもしれませんが、それを実際に体験して、乗り越えていったあーちゃんさんの体験は、お話を聞いているこちらも素晴らしい経験をされているなぁ、と羨ましく感じたほどです。
あーちゃんさんがたくさんの苦労の中から学んだことは日本での仕事でも活かされること間違いないでしょう。
このページの目次
文化や価値観の違いに直面し、考え方や行動が変わっていった
発展途上国の現実と難しさに直面
初めて訪れる発展途上国での生活は想像以上に大変なものでしたし、そこに住む子どもたちの環境も非常に劣悪なものでした。
もともと語学には自信があったためコミュニケーションを取ることに苦労はありませんでしたが、英語が通じても文化の違いなどにより、言葉は通じても概念や伝えたいことが通じないということが多々ありました。
子どもの衛生環境を改善するため、手洗いをきちんとすることを徹底しようと呼びかけをしても、その習慣がないため手洗いがそもそも何なのか、どのような効果があるのか、というところから説明しなくてはいけませんでした。
また、十分な子育て環境が整っていないにもかかわらず、子どもが次々に生まれるという状況にもメスを入れるため、両親世代に対して正しい性教育を行ったり、ファミリープランニングについて説明したりしました。
しかし、なかなかすぐには理解してもらえず、今までになかった考え方を取り入れてもらうための工夫について非常に考えさせられました。
文化や価値観の違いを踏まえたコミュニケーション
同じような環境で生活する日本人同士だと、1から100まで全てを説明しなくても大抵のことは理解してもらえることが多かったため、こちらが伝えたいことを理解してもらえないという状況に陥ったことがあまりありませんでした。
しかし、インターンシップを通じて初めて他文化に暮らす人々と生活をした時、こちらの意図していることを正確に理解してもらうことがいかに大変なのかということを知りました。
同時に、相手が言わんとしていることをできる限り相手の立場に立った上で理解しようとする必要があることも学びました。
また、現地のスタッフとのコミュニケーションのとり方についても非常に学ぶことが多かったです。
渡航前からメールなどでのやり取りがありましたが、こちらが質問したことに正確に答えてくれなかったり、返信が非常に遅かったりと、ルーズに感じてしまう場面が多々ありました。
日本人のような期日をしっかり守ったり、メールの文面や体裁にこだわるような姿勢はあまり見られず、自由な印象を受けました。
渡航後も同様で、待ち合わせの時間に現れなかったり、急に当日のスケジュールが変更になることも多々ありました。
その状況を改善するために自分には何ができるのか
最初はストレスに感じることも多かったのですが、次第に様々なペースで仕事をする人たちとも上手く付き合っていかなくてはいけないと気持ちを切り替えられるようになりました。
正確な答えがほしいことに関しては箇条書きにして相手に分かりやすく回答ができるように促したり、時間管理については具体的にどのような活動をいつまでにしたいから何時までに必ず始める必要があるという根拠を示して相手の行動を促すなど、こちらができる対策をすることに考え方や行動がシフトしていきました。
伝えたいことが上手く伝わらなかったり、相手の仕事のペースとこちらのペースが合わなかったりとストレスを感じることも多かったインターンシップですが、その経験から受け身になって悲観するのではなく、その状況を改善するために自分には何ができるのかを考え、実行に移すことができるようになったことはインターンシップから得られた大きな成果だと感じています。
できる、と思っていたことができないという経験は大きな学びだった
英語はただの手段でしかなく、それだけでは不十分
インターンシップに参加する前は、途上国での生活がどのようなものなのか漠然としたイメージしかありませんでしたし、英語が通じれば不自由なく生活ができると思っていました。
そのため、日本にいる間は現地の状況のリサーチなどを行い、具体的にいつまでにどのような活動をするのか綿密な計画を立てていました。
しかし、インターンシップに参加して、英語はただのコミュニケーションの手段の一つでしかないということを痛感しました。
言葉では分かっていても、腑に落ちる説明をするということがいかに大変なのかを実感しましたし、言葉が話せるだけでは人々と心を通わせるには不十分であることが分かりました。
その土地の文化や人々の考え方など、思考の裏側にある背景を十分に理解した上でないと本当の意味でコミュニケーションを取ることは難しく、相手に受け入れてもらう努力が必要であることを実感しました。
机の上での解決策と現場との大きなギャップを知った
また、インターンシップに参加したことで、リサーチから得られた机上の議論のような事柄はすぐには生活に影響を及ぼすわけではなく、その日その時間を過ごすことで人々が精一杯であることが分かりました。
現地で生活する人々を目の前にしないと分からない現状も多く、インターンシップ参加前には「こうすれば改善するのに」と思っていたことも、実行に移すためには幾多の壁があることを現地に入って初めて知りました。
インターンシップに参加していなければ理論やあるべき姿などを押し付けてしまっていたのだと思いますが、インターンシップに参加したことにより、まずは現地を見てみないと本当に何が問題で何が必要とされているかが分からないということを知りました。
インターンの経験を活かし海外業務を行う専門商社へ
海外とのやり取りがメインの専門商社から内定を頂いたため、今後は海外の人々とのやり取りに際してインターンシップで学んだことを活かし、文字面だけではなく、発言の裏側にある真意までを理解する努力を忘れないようにしたいです。
また、問題が発生した際にはできる限り現地に入るなど、フットワークの軽さと現場主義の感覚を絶えず持ち続けようと思います。
今回はインターンシップだったためできることも限られていましたし、現地の子どもたちに対して大きな成果を生むこともできませんでした。
そのため、今後はインターンシップのような活動だけではなく、ビジネスを通じて経済を動かすことで、途上国の人々の支援に役立つような活動ができるようにしたいと思います。
相手を理解しようとする姿勢を忘れずにインターンを過ごしてほしい
海外インターンシップでは、今まで自分が想像していなかったような壁にぶち当たることが多いと思います。
コミュニケーションももちろんですし、生活スタイルも日本とは異なることが多いです。
すぐに順応できなくても、相手を理解しようとする姿勢を常に持ち続けることがお互いの信頼関係を築き、結果的に実り多いインターンシップにつながると思います。
キャライズ編集部からのコメント
あーちゃんさんは企業ではなくNGOでのインターンシップということで、発展途上国の貧困問題というビジネスとはまた違うフィールドでのご経験でした。
ボランティアはビジネスに比べると「相手に本当に役に立っているか」がわかりにくいという側面がある(関連記事)のですが、現地の方々とコミュニケーションを取ることで本当に必要とされていることが何なのかを理解しようとした姿が見て取れます。
あーちゃんさんの体験談にもあるように、文化や価値観が違う、というところに気づくだけでも海外インターンシップとしては大きな成果なのですが、それを乗り越えることができると更に一皮むけることができます。
言語だけできても、文化や価値観と行った背景となる情報が共有されていなければコミュニケーションはうまく取れませんし、逆にそのあたりをしっかり共有しておけば英語が少々苦手でも十分意思疎通ができたりするのが海外ビジネスです。
もちろん、言語力が高いに越したことはないのですが、英語力と同じくらい重要なのが文化や価値観、相手の理解度を把握した上で必要な情報を判断して伝える力、そして、相手の真意を考えることです。
文化の違いといえば、インターンで仕事をしているときにスケジュール通りに相手が来なかったりということは外国ではよくあることです。
そういうときに「自分はないがしろにされている」と思ってしまうのは、日本の常識で考えてしまっているから。
良くも悪くも「直前で予定を変えるのが普通」という文化で過ごしている人が多い国や業界なだけであり、相手はなんの悪気がなかったりすることも国によっては普通だったりします。
そんな「日本の常識とは違う」という壁に直面したときに諦めてしまってはもったいないですよね。
実際に海外の人と一緒に仕事をしようというときにも、同じ問題は必ず起こります。
せっかくのインターンシップ、どうやって乗り越えることができるのか色々なやり方を挑戦して、たくさん失敗しておくことでいつか「自分なりのうまくいく対処法」を見つけることができるはずです。
あなたにあったアドバイスと合わないアドバイスが有るのと同じように、問題の解決策も自分にあったやり方と合わないやり方があり、「誰でも絶対にうまくいく方法」というものはありません。
そんなものがもしあったとすれば、皆それを教わっているはずです。
しかし、こればっかりは経験を通じて身につけるしかないですし、その身につけるプロセスを通じて「イレギュラーに対応する力」が磨かれていきます。
これも、海外インターンシップを経験した方に企業の人事部の方が期待している能力の一つではないでしょうか。
普通に大学生として過ごしていると、価値観の合わない人とは単純にコミュニケーションを取らない(仲良くならない)という選択をとっているかと思います。
同じ文化、同じ価値観を共有した仲間内でのコミュニケーションばかりになってしまっている人が多いように思えます。
会社に入れば、社内だって「お局さん」「いつもしかめっ面の部長」「いつも仕事をしてるかわからないよく喋るおじさん」といったように、普段仲良くしてこなかったであろう人たちと協力して進めていくことになります。
これが社外ともなれば、全く違う文化の方々に対してコミュニケーションを取る機会はたくさん生まれてきます。
そして、今後は外国人と仕事をする機会も増えるでしょうし、それがテレビ電話などのリモートかもしれません。
違う文化や価値観の人とも意思疎通ができる能力というものが、企業が求める「コミュニケーション力」なのですが、これを短期間で鍛えることができるのが海外インターンシップです。
先日お会いした海外インターンシップに参加した方は「海外での異文化を知ってから、日本人同士も同じように異文化なことがあることがわかった」とおっしゃっていました。
異文化を知り、受け入れ、その上でお互いが気持ちよく仕事をできるようなコミュニケーション力を持ち、現場に深く入り込む力があれば海外での仕事にグッと近づきます。