インタビュー・体験談

インターン先はIAEA。国際機関で働くとは!?元文系大学生が理転して原子力分野の最高峰機関で働いちゃった話

浅原章さん。

福井大学の大学院生で工学研究科の原子力工学専攻、博士後期課程の2年生です。今回はそんな浅原さんに、国際機関で働くことについてたくさんのお話しをして頂きました。

国旗の前に立つ浅原さんと職員の方

このページの目次

専門分野を変えるという決断のきっかけ

東日本大震災のボランティアを経験し、指針を決めた自分が学ぶべきこと

2011年の福島第一原発の事故です。東日本大震災で起きた福島第一原子力発電所事故が1番大きなきっかけでした。その2011年が大学院に入る直前でした。学部では違うことを専攻していたのですが、被災地にボランティアで行くという機会がありました。そこでは原発とは関係なしに、避難している方々とか被災した地域の方々の作業の手伝いや、ケアなどを行っていました。そんな中で皆さん口々に原発の話しをされていて、原発について自分の口から語れるようになりたいと思いました。また当時僕は文系の学部に属しており、そんな文系の人材が原子力という分野の世界にいても面白いのではないかなという期待もあって今に至ります。それがきっかけで理転しました。元々は法律を学んでいました。大学院から理系へ行くのは大変なのは大変です。入学試験等もありますしね。ただ、自分が今在籍している福井大学の場合は学部に原子力専攻というものが無いので、皆院から入ってきます。なので結構ベーシックな部分から教えてくれるという意味で入試問題も割と難易度も高くありませんでした。学部の理系の学生なら知っているよなという知識のレベル感でいけました。もっと工学系専門の大学などになると入試問題に専門的な知識を求められると思うので、自分では手が届かなかったと思います。

※2016年に学部再編成があり、現在は学部から原子力を学ぶことができます。機械・システム工学科に「原子力安全工学コース」というのができました。

IAEAのインターンシップに応募した理由

インターンシップに応募したのが、文系の学部を卒業してすぐだったので、まだ原子力というものを全然知らない状態でした。元々文系の学部にいて、他の学生と比べて英語が比較的出来たというのも理由のひとつです。まずは原子力というものを世界がどう思っているのかを知りたいなと思いました。ですが事前の知識が無いとふつうは無理ですね。(笑)僕の場合は、何か面白い学生が来たっていうので。また分野もめずらしかったので、やる気を買っていただいたのだと思います。僕が専攻をしているのが、コミュニケーション分野というもので、原子力の中でも結構マイナーな分野なので、そういう意味でもうまい具合に通ったみたいです。でも普通は通らないと思います。(笑)

原子力のコミュニケーション分野とは

日本でいうと発電所が原発を所有している訳ですけれども、発電所以外の自治体、国や住民との関わりがあって成り立っているので、例えば事故の後、どのような処理を行うのか、様々な主体が相談をして意思決定をするというプロセスがあります。その際生じる問題をどう解決するのか、という分野になります。処分場をどこに作るのかという問題ですとか、エネルギーミックス(特定の発電源に偏らず、複数の発電方式をバランスよく組み合わせ、安定して電気を作ること)とかですかね。また原発等の近隣住民に対してどのような情報を与えるべきであるのか、といった問題解決も分野内になります。報道とどう関わっていくのかということや、大学教授がどのようにコミットすべきかということも研究の対象ではあります。あまり理系っぽくないことをやっていました。IAEAでも丁度似たような分野を専門とされている方がいて、それもあって選考に通ったというのもあると思います。

IAEAのインターンシップに参加をする方法

通常はIAEAのホームページに、インターンシップの応募先のリンクがありまして、web上でドキュメントを提出するという感じです。日本の場合は少し特殊で、原子力大学連合のようなものがあり、原子力の専攻を持った大学が加盟しているのですが、そこが年に1回優秀な学生を集めてIAEAに派遣しようといういうなプログラムを行っています。年に2~3人程の大学生をIAEAに派遣しています。そのプログラムのことを知ったので、それに応募をしました。具体的な交渉は基本的には大学連合の事務側で行ってくださいました。参加倍率は…どうなんでしょうね。元々原子力専攻の学生は多くはないので、数倍くらいではないでしょうか。ただ普通にホームページから応募するとやはり倍率は高いと思います。世界中の学生が応募するので、数十倍とか数百倍になるときもあると聞いています。語学的な証明に際して、何点という基準は無いのですが、業務に支障がない程度には語学力が必要です。基本的には面接をやったうえで判断されます。もちろん勉強はしていました。でも自分が周りの応募学生の中で英語が出来たというのは、周りが出来なかったからです。(笑)比較的僕が出来たという環境がありました。本当に他の応募者の人はTOEIC300点台とかでした。比較的できたということで周りのプッシュがありました。

IAEA本部

国際機関、IAEAでのインターンシップの内容

インターン先と業務内容

インターン先が、IAEA国際原子力機関というところで、オーストリア、ウィーンにある本部でインターンシップを行いました。業務内容なのですが、ざっくりいうと、例えばIAEAのホームページを更新したりですとか、報告書の作成も行っていました。各加盟国の活動報告をまとめた報告書があってその作成などを行っていました。事務作業が多かったです。基本はデスクに座ってパソコンをいじったりだとか、時々開かれる会議のオーガナイズを手伝ったり、実際に参加をしたりしていました。

IAEAでのインターンの1日の流れ

コアタイムというものがありまして、大体10時~15時までは必ずオフィスにいなければならないというルールがありました。ランチブレイクが1時間あるとして、9時に出勤して、18時に帰るというのが大体の流れでした。かなりフレキシブルで、別に遅刻したから何かということも無いですし、さすがに遅すぎるとよくはないのですが、少し早く帰っても大丈夫です。金曜日なんかは皆さん凄く早く帰ったりしていました。15時16時には帰ってしまう、みたいな。やることをやっていれば文句は言われないという感じです。日本とはかなり違うと思います。

インターンシップの中で感じたやりがい

例えば報告書文書の作成はとてもやりがいがあったなと思います。IAEAの報告書として出されているものは結構ありまして、僕が携わったのは原子炉を廃炉にする際のトータルのプロセスでのコミュニケーションの在り方というものでした。僕の上司が報告書を作成していまして、そのドラフトを手伝ったという感じです。寧ろいつも読んでる側だったので。自分が作っているというのは不思議な感覚でした。それが完成した際には、実際にインターネットで公開されて、全世界でみることができるようになります。また、年に1回総会が開かれたりするのですが、国の代表団が集まって、議論したりとかそういう場が身近にあって、IAEAでやるイベントというものが全世界でニュースになるという環境だったので、会議にしろ、報告書にしろ、結構各国の専門家と実際に関わることがあったので、事務作業といえどやはりひとつひとつ世界に影響を与えているのだなと実感をもって取り組めたかなと思います。

日本では出会えないような方々との食事インターンシップの中でいちばん大変だったなと思うことはありますか?

個人的にはやはり英語が大変でした。基本的には英語をオフィス内では使います。一応公用語が6つくらいあるのですが、英語はマストという感じでした。色々な国の方々が集まっているので、必ずしもみんなうまくない、アクセントとかにもばらつきがあるということです。中にはアメリカやイギリスから来ているネイティブの方もいて、その人曰く、「このレベル(語学力)でいいんだね」という風に言われていました。慣れるまでは、コミュニケーションがみんな完ぺきではないながらも、そのくみ取り方が、発音も含め難しかったです。

世界各国のインターン生との出会い

そうですね。必ずしも原子力が専門の学生、というわけではなくて、別の分野が専門の学生もいました。インターン生は結構多いと思います。トータルではちょっと分からないですが、数百人規模ではあると思います。入れ替わりも激しくて、短ければ3カ月ですし、長い人は1年間くらいやっている人もいるので。国連で働きたいから経験を積んでいるという人も中にはいました。放射線利用とか海外との共同プロジェクトのようなものをやったりとか、そういうところでも人が必要だったりするので。あとは事務方とか、僕なんかも“IAEA=原子力工学をやっている人”というイメージがあったのですが、結構そうじゃないなという感じでした。国連に近いというか、事務組織なんだなと思いました。

ヨーロッパでの素晴らしい出会い

欧州での生活での生活!

“音楽の都”オーストリアウィーンでの生活

音楽の街として有名なので、コンサート会場とか、オペラ座とかがたくさんあるのですが、世界遺産のお城とかあったり、ドイツと似たような感じだなという印象でした。古いヨーロッパの街並みというか。公用語はドイツ語です。ですが、大体みんな英語を喋れます。英語が話せれば問題なく生活することが出来ます。交通網が凄く良くて、休みの日は結構旅行とかで近隣の国に行っていました。訪れた国の中でも一番チェコが良かったです。プラハという場所があるのですが、丁度秋の紅葉の時期に行ったので凄く綺麗で、ビールもおいしくて。ヨーロッパの近隣国には凄く移動しやすい環境でした。ビザも不要ですし、高速バスとかも結構安くて、フライトもたくさんあるので。ウィーンは国内線も国際線もどちらもあるので電車にしろバスにしろ飛行機にしろウィーンだったらどこでも通ってるかなという感じです。ウィーンの中でももちろん楽しめますし。

ウィーンの美しい街並み

ウィーンでの移動

主に地下鉄を利用していました。たくさんの路線が張り巡らされていて、便利です。東京とかとそんなに変わらないです。5,6本メジャーな線があって、って感じで。どこでも行くことができます。オーケストラとかオペラとかにも行きました。日本にいるときは、嫌いではなかったけれどそこまで興味もなかったかなという感じだったのですが、ウィーンでなので、折角ということで行きました。

オペラ劇場

ウィーンの食べ物

ウィーンの食べ物は景観と同様ドイツと似ています。肉、ビール、ソーセージ、ワイン、ポテトみたいな感じです。ドイツ料理なのですが、シュニッツェルという食べ物があって、好きでした。とんかつに近いのですが、薄く衣で揚げたようなものです。それにビールが好きでした。あとは、ソーセージ。その辺はジャンキーで好きでした。日本食が恋しくなることははあまりありませんでした。友達は結構恋しいと言っていたのですが。僕は一切なかったです。出汁の味が恋しいとか、言っている人もいました。油モノが苦手な人はあまり食べるものがないかもしれません。チャイニーズレストランとかもあるので、そこに行くといいかもしれないですね。肉を除くと、ジャガイモばっかりという感じでした。

ウィーンでの食卓

ウィーンで生活をするための準備

保険にはきちんと入って行きました。東京海上日動です。個人で申し込みました。大学連合側から何かしら入るように言われていて、自分で探して申し込みました。両親はお金はどうするのかという部分は気になっているようでした。金銭面に関しては、受け入れ先から支給をされていたので大丈夫でした。プログラムの中にお金も含まれていて、派遣が決まってお金も支給しますよ、という感じでした。ホームページからノーマルに応募をしても場合によっては給料をもらうことも出来ないことはないらしいです。僕の場合は無給でした。飛行機代と、アパート代は出して頂きました。アパートの費用を出してもらえるともう十分でしたね。

憧れの国際機関で働き、見据えた目標

IAEAで働いたからこそ生まれた大きな目標

卒業をしたらまずは国内で一般の企業に就職をしようと思っています。ただその時は既に博士号を持っていると思うので、その分野を自分の仕事としてやっていきたいと思っています。就職をして、実務経験を積んだあとにもう一回国際機関で働きたいなと思っています。ただずっと働けるわけでは無いので、30代で6~7年くらい働いて、40くらいで日本に戻ってきてまた日本で働くというイメージを持っています。研究職はあまり考えていません。ただ普通は研究者になる人や大学の教員になる人が博士後期に進みます。僕の場合は国際機関で働きたいからというのがあります。国際機関ですと博士号を持っているか否かで上下関係が変わるらしくて、博士号を持っておこうと思ったのが進学を決めた理由です。言うだけは簡単ですが、野望は持っています。(笑)

今のところは順調に来ていると思うので、これからですね。

海外インターンシップ迷っている人に一言!

とりあえず行ってみろ、という気はします。迷ったら行ってみるべきです。行く前はそれこそ英語ですとか、違う分野の人達と関わるので、不安が出てきてしまうというか、大変なのではないかというのももちろんあります。でも行ってみると意外と周りの皆優しかったり、もちろん語学力も向上します。また、国連で働くという選択肢も生まれたりと、視野が広がったりもすると思うので、言って損はないというか。でも漠然として目的が無いと、無駄に過ごしてしまうので、何かしらの目的は大事なのですが、行ってみるべきだと思います。

ヨーロッパの美しい景色

インタビューを終えて

国際機関というスケールの大きな舞台を経験されていて、大きな夢へのプロセスをしっかりと歩まれているんだなと思いました。いつか国際機関で働くという大きな夢に向かって、一歩づつ着実に歩んでいると感じました。

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